
現代自動車グループのチョン·ウィソン会長の経営行動が躊躇ない。 以前とは全く違うリーダーシップを通じて、グローバル企業として浮上した現代自動車グループを率いているという評価だ。 特に、最近推進しているライバル企業との積極的な協力、破格的な人事、すべての形態のモビリティを網羅する製品群の拡張は、チョン会長の経営スタイルを最もよく示している。
現代自動車グループの関係者は「一人の力ですべてを解決するという以前の純血主義は、現代自動車グループのようなグローバル企業にはもはや美徳ではない」とし「チョン会長が果敢に融合型組織に変身を図る理由」と説明した。
チョン会長式の経営戦略の中で最も目立つポイントは、ライバル会社と競合しながらも協力が必要な分野では積極的に協力する姿だ。 友人(friend)と敵(enemy)の合成語である「フレネミー(Frenemy)」とも呼ばれるこのような戦略は、世界1位の自動車メーカーであるトヨタグループと協力したことから目立つ。
現代自動車とトヨタは米国·欧州·東南アジア·中南米など世界各地で熾烈な競争を繰り広げる関係だ。 大衆的な車を作るという点で顧客群も重なる。 このため、最近現代自動車がトヨタとの協力を強化すると明らかにしたのは異例のことだ。
両社は既存の内燃機関·ハイブリッド車部門で競争関係を継続するが、未来型水素エネルギー生態系の造成には協力するものと見られる。
このような協力が行われるには、チョン会長の存在が大きな役割を果たした。 現代自動車に部品を納品するある企業の代表は「トヨタは石橋も3回叩いて渡るという話があるほど意思決定において保守的な企業」とし「鄭会長が今年初めに豊田章男会長を日本に直接訪ねて現代自動車グループのビジョンとトヨタが得られる点について信頼を与えなかったらトヨタが韓国企業と協力することはなかっただろう」と話した。
グーグルウェイモと自動運転分野で協業するのも同じだ。 チョン会長は自動運転技術のため、フォーティーツードットを買収し、研究組織も再編し、努力を傾けている。 しかし、莫大な資本力を前面に押し出した米国メーカーや自動運転車数千台を運行し、データを集める中国メーカーと競争するには手に余るという判断により、ウェイモと協力関係を結んだ。
現代自動車の関係者は「現代自動車の立場で相手に技術を渡すのは『危機』かもしれないが、相手から受けた技術を活用してより良い技術を開発すれば『機会』になる」とし、「以前の現代自動車が『危機』をより大きく見てライバル企業と協業することに消極的だったなら、『機会』を強調するチョン会長はこれに対する恐れがない」と述べた。
2番目のポイントはグローバル化した人事だ。 15日、現代自動車グループ史上初めて外国人最高経営者(CEO)に任命されたホセ·ムニョス社長が代表的だ。 最近では役員だけでなく既存の部長級にもメタ·グーグルをはじめとするグローバル企業で成果をおさめた人材を迎え入れしている。 ある現代自動車の職員は「部署長が韓国語が下手で自然にチーム員まで英語で疎通するようになった部署もあるという」とし「会社が急速にグローバル化しているという点を肌で感じる」と話した。
鄭会長は起亜に携わっていた時代にも、世界的な自動車デザイナーのピーター·シュライアー社長を迎え入れ、起亜の体質を変えることに成功した。 その後起用したBMW出身のアルバート·ビアマン社長も、現代自動車グループが作る自動車性能を2、3段階アップグレードさせたという評価を受けている。 ある外資系企業HR担当者は「この二人の成功を見ながら全世界で通用する製品を作るためには韓国的人事システムを改革しなければならないという点を体得しただろう」とし「その結果、人事で純血主義を捨てたのがチョン会長式経営が成功した最も大きな理由の一つ」と話した。
チョン会長の経営方式の3番目のポイントは、総合モビリティ企業に変身するための全方位的な投資拡大だ。 現代自動車グループは既存の内燃機関からハイブリッド·電気自動車·水素自動車まですべて生産·販売する数少ない完成車メーカーの一つだ。
これだけでなく、都心航空モビリティ(UAM)をはじめとする新しい形態のモビリティにも莫大な投資をしている。
これを通じて、現代自動車グループはどの市場にも対応できる最適化されたポートフォリオを作っている。 必要によっては製品別に強みを持つパートナーと手を組むことも憚らない。
GMと協力して北米と中南米市場に合うピックアップトラックの開発に乗り出すのが良い事例だ。 インド市場に適した小型車を持続的に開発して発売するのも同じだ。
韓国自動車研究院のナ·スンシク院長は「他の完成車メーカーも最適化されたポートフォリオを構築するために努力したが、あきらめたり失敗した」とし「現代自動車グループの成功は他の自動車メーカーの研究対象になるほど特別だ」と述べた。
[キム·ドンウン記者]